背景
建設プロジェクトにおいては、法令調査や要件整理が設計初期段階で多くの時間を費やす要因となっています。特に建築基準法や各種地域条例、省エネに関する法令など、調査すべき項目は多岐にわたり、関係者間で情報が分散することで、確認や判断に時間がかかる場合が多いのです。このような状況の中、株式会社大林組は、業務の効率化が設計品質の維持向上や顧客価値の提供に直結すると捉え、社内設計部門向けの意識調査を実施しました。その結果、“法令・条例・基準の調査”が最も時間がかかる業務として挙げられ、効率的な情報整理が強く求められました。
生成AIを活用した法令対応業務の効率化の取り組み
そこで、大林組は設計初期段階の法令調査・要件整理業務の効率化に向けて、外部の生成AIサービス「Tektome」を導入しました。このAIエージェントプラットフォームは、法令データに加え、社内に蓄積された過去の事例や法令解釈の知識を組み込むことで、関連法令や設計要件の抽出・整理、留意点の可視化を実現しました。これにより、設計者は初期段階で確認すべき論点や留意事項を基礎資料とともに確認できるようになりました。
この取り組みの目的は、法令対応業務の効率化に加え、設計者と法令確認を行う関係部門間の認識共有を促進させることです。さらに設計後半で直面する可能性のあるリスクの早期把握や手戻りの抑制も期待されています。
効果検証
生成AIを活用してどの程度業務が効率化されたかを確認するために、実務者を対象とした検証を実施しました。主な結果として、法令調査・要件整理にかかる時間を約67%短縮できたことが確認され、100%の実務者が法的検証において論点の整理や確認観点の明確化に効果を実感したと報告されました。これらの結果から、生成AIが補助的に活用されることで、設計初期段階における法令対応がより効率的に行えることがわかりました。
今後の展望
大林組は、今回得られた知見を基に、設計プロセスにおける生成AIの活用をさらに深化させていく計画です。設計者がより創造的な業務に注力できる環境を整えることで、法令順守と設計品質の向上、さらには顧客への提供価値の向上を目指しています。このように、AI技術を活用することで建設業務の新たな形を築くことに挑戦する大林組の取り組みは、今後の業界全体におけるモデルケースとも言えるでしょう。