膵がんの免疫回避を糖鎖で解明する新技術「GlycoChat法」
国立研究開発法人産業技術総合研究所と筑波大学の研究チームは、がんの腫瘍組織内での糖鎖とレクチン間の相互作用を網羅的に探索する新しい技術「GlycoChat法」を開発しました。この技術により、マクロファージが膵がん細胞に対して免疫抑制を引き起こすメカニズムが明らかにされました。
研究の背景と重要性
がん細胞は免疫系から逃れるための巧妙な手段を持っています。特に、がん細胞表面の糖鎖が、免疫細胞に存在するレクチンと結合することで、免疫回避に寄与していることが最近の研究で示されています。膵がんは難治性がんの一例であり、新たな治療法の開発が求められています。新たに開発された「GlycoChat法」は、この糖鎖とレクチンの相互作用を調査するための画期的な手段となることが期待されています。
GlycoChat法の革新
GlycoChat法は、DNAバーコードを用いて内在性レクチンを特定し、がん細胞との相互作用を単一細胞レベルで観察することが可能な技術です。この手法により、膵がん患者から切除された腫瘍組織を分析し、54,634細胞の糖鎖および遺伝子発現データを取得しました。この情報により、膵がん細胞の糖鎖の異常なパターンや、異なる細胞間の相互作用の強さを明らかにし、腫瘍微小環境内での免疫関与を解明するための強力なツールとなります。
免疫抑制機構の解明
具体的には、GlycoChat法を用い、膵がん細胞とマクロファージの間の相互作用が調査され、CLEC10AおよびSIGLEC3というレクチンが特定されました。これらのレクチンは、膵がん細胞の免疫抑制に寄与していることが示されました。マクロファージがこれらのレクチンを介して膵がん細胞と結合し、免疫応答を弱めることに寄与する仕組みが解明されれば、今後の治療法開発に大きな影響を与えることでしょう。
今後の展望
今後は、GlycoChat法を活用し、糖鎖をターゲットにした新たな免疫チェックポイント阻害剤の開発に向けた研究が進められる見込みです。さらには、患者ごとの免疫押制機構を解析し、個別化治療の実現を目指します。この技術の進展は、膵がんを含む様々ながんに対する新たな治療法の道を開くかもしれません。
研究成果の詳細
この研究成果は2026年1月13日、日本時間に『Advanced Science』に掲載予定です。糖鎖がん治療の新しい局面をもたらすことに期待が寄せられています。 詳細情報は
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