太陽光パネルのカバーガラスに含まれる希少元素アンチモンの抽出技術
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(通称:産総研)と中部電力株式会社が共同で、太陽光パネル用カバーガラスから希少元素アンチモン(Sb)を抽出する新たなプロセスを開発しました。この技術は2030年代後半に予測される太陽光パネルの大量廃棄時における課題解決の一助となるものです。
背景とニーズ
太陽光パネルを構成するカバーガラスは、高い透明性を求められるため、製造段階で酸化アンチモンを添加しています。しかし、これにより使用済みパネルの処理が課題になっており、2030年代後半には多くの太陽光パネルが寿命を迎え、そのカバーガラスを大量に処理しなければならない状況が予想されています。このことから、効率的なアンチモンの分離・回収技術の必要性が高まっています。
新たな抽出プロセスの開発
この新しいプロセスは、水熱処理技術に基づいています。具体的には、使用済みカバーガラスを粉砕し、水と混合した状態で、一定の温度条件下で加熱することで、約8割に相当するアンチモンを抽出することが確認されました。水熱処理では、ガラスが結晶化する際にアンチモンが結晶内に取り込まれず、液相中に留まることを利用しています。
実験結果によると、6時間の水熱処理を行った場合、アンチモンの抽出率は86%に達することが分かりました。これは、回収プロセスの効率化に寄与する重要な成果です。蛍光X線分析(XRF)によりこの抽出率が算出されており、今後さらなる実用化に向けた研究が期待されています。
社会的な意義と今後の展望
この技術の実用化は、政府が推進する資源循環型社会の構築に向けた大きなステップとなることでしょう。希少元素の回収技術が確立されることで、国産資源の確保にも貢献する可能性があります。
今後は、このプロセスの社会実装に向けて、さらなるスケールアップの研究が進められる予定です。抽出メカニズムの詳細な理解に基づく効率化が図られ、得られたアンチモンの加工技術や、結晶化ガラス粉末の新たな活用法も模索されます。
まとめ
太陽光発電は再生可能エネルギーの重要な一翼を担う技術であり、その持続可能性を確保するためには、カバーガラスの効果的な処理が不可欠です。この新しいアンチモン抽出プロセスは、そのための重要な技術革新となることが期待されます。さらに、2025年の中部電力のテクノフェアにおいても、研究成果が紹介される予定です。今後の進展に注目が集まります。