東京都、土砂災害の早期検知を実現する新センサーを開発
日本の地形は、降雨が多いことから土砂災害が頻繁に発生します。このような土砂災害のメカニズムは主に表層崩壊によるもので、早期の対策が求められています。そのため、土壌水分と斜面傾斜を同時にモニタリングする技術が非常に重要です。しかし、これまでの測定法にはいくつかの課題がありました。
土壌水分と斜面傾斜の同時計測
特に水分を多く含む土壌では、測定精度が低下しがちです。また、斜面の傾きを同時に計測することができず、これが危機対応の遅れにつながっていました。しかし、地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター(以下、都産技研)と大起理化工業株式会社は、この問題を解決する新たなセンサを共同開発しました。
このセンサは、水分が多い土壌においても高い精度で土壌水分と斜面傾斜を同時に測定できる構造となっています。これにより、特に豪雨時における表層崩壊の早期発見が期待されます。
技術の特長
この新センサの特徴は2つあります。一つ目は、センサの側面方向で土壌の水分(誘電率)を正確に測定できる電極構造です。この構造は特許出願中とのことで、今後の展開が注目されます。
二つ目は、0.01度という高い分解能を持つ傾斜センサを内蔵している点です。これにより異なる深さでの同時計測が可能となり、崩壊前兆現象の判定基準値(0.02度/hour)に照らしても、より精度の高い判断ができるようになるでしょう。
メリットと今後の展開
このセンサの開発には様々なメリットがあります。まず、水分の多い土壌を高い精度で測定可能であること、さらに大規模な掘削作業が不要である点が挙げられます。また、土砂崩れの予測に必要なデータを異なる深さで取得できるため、危険区域のモニタリングにおいて非常に有用です。特に全長約2mの範囲での測定が可能なので、より広範囲なデータ収集と分析が期待されます。
今後の予定としては、大起理化工業株式会社が2023年9月からこのセンサの販売を開始します。また、「危機管理産業展2025」において、10月1日から3日にかけてデモ展示も行われる予定です。この機会を通じて、多くの人々に新技術の重要性と可能性が知られることになるでしょう。
この新しいセンサ技術によって、東京都内だけでなく全国各地の土砂災害リスクを低減できることが期待されています。将来的には、この技術を基にさらなるイノベーションが起こることに期待が寄せられています。