肝臓脂質代謝の新発見
2025-03-12 11:30:51

肝臓脂質代謝におけるカルシウム恒常性の重要性と新たな治療の可能性

肝臓脂質代謝における新たな知見



最近、早稲田大学を中心とした研究チームが、肝臓の脂質代謝における「Nwd1遺伝子」の重要な役割を発見しました。この研究では、Nwd1遺伝子の欠失が非アルコール性脂肪肝炎(MASLD/MASH)様の症状を引き起こすことが示され、特にカルシウム(Ca²⁺)の恒常性維持に関与していることが明らかになりました。

研究の背景



肝臓は脂質代謝や解毒機能など、多くの重要な役割を果たす臓器です。しかし、近年、非アルコール性脂肪肝炎(MASH)の発症が世界中で増加しており、実際のMASH患者ではNwd1遺伝子の発現量が減少していることが示されています。これにより、脂肪が肝臓内に過剰に蓄積し、線維化や炎症が引き起こされるというメカニズムが示唆されていました。

研究成果の概要



研究チームは、Nwd1遺伝子を欠失させたマウスを用いた実験を行い、脂肪の蓄積や線維化、細胞死の増加を確認しました。また、Nwd1は小胞体内のカルシウム輸送を制御するタンパク質であるSERCA2と相互作用し、細胞内のCa²⁺のバランスを保つ役割を果たしていることが分かりました。このメカニズムが破綻することで、MASHのような病状が誘発されることが明らかになったのです。

この研究成果は、肝臓の脂質代謝に関する新しい知見を提供するだけでなく、将来的な治療法の開発にも寄与する可能性があります。

社会的影響と今後の展望



非アルコール性脂肪肝炎(MASLD/MASH)は、現在、全世界の人口の約30%が抱える問題であり、今後の研究が非常に重要です。この研究によって得られた知見は、Nwd1やSERCA2を標的とした治療薬の開発や、創薬スクリーニング手法の構築に向けて新たなアプローチを提供します。これにより、非アルコール性脂肪肝炎に対する予防策や治療法が実現できることが期待されます。

研究の意義



今回の研究は、早稲田大学、明治薬科大学、群馬大学の研究者たちが協力し、脂質代謝異常という疾患に新たな光を当てるものとなりました。肝臓疾患に関するメカニズムの解明と、実際の患者における解決策の提示が求められる中で、Nwd1遺伝子の発見は今後の研究に大きな影響を与えるでしょう。

研究の詳細は、2025年3月11日付で『Communications Biology』に発表されており、今後の医療への展開が期待されます。詳しい論文情報は、こちらから確認できます。


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