ゆずのエキスがもたらす美肌効果に関する最新の研究
東京の品川区に本社を構える株式会社ポーラのPOLAイノベーションセンターが、2025年7月に開催される第50回日本香粧品学会学術大会にて、興味深い研究成果を報告します。この研究は、東京工科大学の松井教授とともに行われたもので、ゆずの残さから抽出したエキスがヒトの肌細胞、特にケラチノサイトに与える影響について探求されています。
研究の背景
日本の伝統的な食材であるゆずは、その果実や香りだけでなく、その残さに秘められた効果にも注目が集まっています。本研究では、高知県産のゆずの残さを使って、エキスの抽出を行いました。抽出方法としては、50%のエタノール水溶液を用い、エキスを生成することに成功しています。このエキスがケラチノサイトに与える影響は、肌のバリア機能や健康にとって非常に重要です。
具体的な研究成果
研究のタイトルは「未利用資源ユズさのうエキスはケラチノサイト細胞内Ca2+濃度上昇を促す」です。このタイトルからもわかるように、研究の焦点は、ゆずエキスが細胞内カルシウムイオン(Ca2+)の濃度をどのように上昇させるのかにあります。
細胞内Ca2+濃度上昇のメカニズム
研究では、ヒト初代培養ケラチノサイトにCa2+プローブを用いて、ゆずエキスを添加した際の細胞内Ca2+濃度の変化を観察しました。その結果、ゆずエキスの添加によって多くの細胞で細胞内Ca2+が上昇したことが確認されました。この現象は、ゆずエキスがTRPV4チャネルを介してCa2+の流入を促すことによって引き起こされていると考えられています。
TRPV4の役割
TRPV4は、細胞膜を通過するカルシウムイオンの流入を調節するチャネルですが、その活性は皮膚のバリア機能にも重要な役割を果たしています。TRPV4が活性化されると、タイトジャンクションの形成を助け、皮膚のバリア機能が向上することがわかっています。この実験では、TRPV4の阻害剤を添加した細胞にゆずエキスを加えた場合、Ca2+の上昇を抑制されることが確認され、TRPV4がこのプロセスにおいて重要な役割を果たしていることが示されました。
これからの展望
本研究の成果は、ゆずエキスの利用価値を高めるだけでなく、皮膚の健康を促進する新しいアプローチを提案しています。特に、美肌効果や皮膚バリア機能の維持に関心のある方々にとって、ゆずエキスは新しいスキンケア成分としての可能性を秘めていると言えるでしょう。今後のさらなる研究によって、ゆずの残さが持つ魅力が一層引き出されることを期待しています。
この研究成果は、美容業界における新たなトレンドを生む可能性を秘めています。エコな素材を使用し、新たな製品開発に繋がることが楽しみです。