化石燃料ファイナンス報告書2025の発表
2023年6月17日、米国サンフランシスコに本部を置く環境NGO「レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)」は、新たな報告書『化石燃料ファイナンス報告書2025』を発表しました。この報告書は、世界の主要な金融機関による化石燃料企業への融資と引受の全体像を示しています。調査の結果、昨年、世界の銀行から化石燃料産業に対して約8694億米ドルが供給され、これは前年から1625億ドルも増加したという結果が出ました。特に2024年には、全体の約半分にあたる4290億ドルが化石燃料部門の拡大に投入される見込みです。これに伴い、2021年から2024年の間に、化石燃料産業における資金提供は累計で1兆6000億ドルに達すると予測されています。
日本のメガバンクの状況
興味深い点は、日本の3メガバンク、つまりみずほフィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループが、化石燃料ファイナンスのワースト12銀行に名を連ねていることです。2024年度の資金提供額では、みずほが4位、MUFGが6位、SMBCが11位とされており、これらの銀行で全体の12%を占めています。特に、みずほは化石燃料を拡大する企業への資金提供でもワースト入りしている現状が問題視されています。
銀行と気候変動の関係
報告書の中では、国際エネルギー機関(IEA)の科学者たちが新規の化石燃料開発は必要ないと警告している一方で、銀行が気候変動リスクに背を向けていることが指摘されています。2021年に行われた国連気候変動会議において、多くの銀行が気候対策へのコミットメントを表明したにもかかわらず、その後の資金提供の増加は言及された約束と真逆の動きと言えます。この変化が、環境危機を悪化させている要因の一つとされています。
調査の概要と結果
報告書に基づく調査は、2021年から2024年の間の化石燃料ファイナンスの動向を網羅的に分析したもので、特に主要な民間銀行65行による化石燃料企業への資金提供が重視されています。2024年におけるファイナンスは、融資が4670億ドル、債券が4010億ドル、買収ファイナンスが829億ドルとされ、各形式での増加が見られました。
地域別の資金提供状況
少なくとも9行の銀行がワースト12に名を連ねており、日本と米国の銀行が特に目立つ状況です。米銀が同年に2890億ドルの資金を化石燃料へ提供する中、日本のメガバンクは1063億ドルを必要としています。これによって、今後も米国本社の化石燃料関連企業への資金提供が続くことが見込まれています。
環境団体からの声
RANのリーダー、アリソン・フェイジャンス=ターナー氏は、銀行が環境問題に対する責任を果たさず、むしろ金融システムのリスクを増加させる行動を続けていると非難しています。また、気候カオスを防ぐためには、金融機関に迅速な政府規制が求められると述べました。
日本のメガバンクが依然として化石燃料関連のプロジェクトに巨額の投資を続ける中、環境団体や市民からの圧力は強まっており、脱化石燃料を求める声が高まる一方で、正しい方向に向かうための取り組みが急務とされています。
結論
銀行の化石燃料ファイナンスの現状は、気候変動対策を進める上で大きな障害となっています。持続可能な未来を目指すためには、金融機関の行動がこれからの社会においても重要な影響を与えることを理解する必要があります。今後の金融政策や企業の姿勢に注目していきたいと思います。