はじめに
ストレスチェック制度は、日本の労働環境におけるメンタルヘルス向上を目的とし、2015年以降、従業員数50人以上の事業所では年1回の実施が義務づけられています。しかし、2028年からは従業員数50人未満の事業場にも義務化が進むということで、これらの小規模組織に対する理解が求められています。ドクタートラストのストレスチェック研究所では、7,779組織から集まったデータをもとに、全国の労働者56万人以上のストレス状況が分析されました。
受検率とストレス状況
ドクタートラストの分析によれば、受検率が最も高かったのは従業員数50人未満の組織で、92.8%が受検を実施しました。これは、企業側も従業員側もストレスチェックの重要性を理解し、積極的に参加していることを示しています。
一方で、同じ小規模組織の高ストレス者率が15.7%に上り、これは1,000人以上の組織に比べて高い数値です。特に小規模な組織では、1人のメンタルヘルスの不調が全体の士気に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。労働災害動向調査でも、小規模組織は労働災害の発生頻度が高い傾向にあることが報告されています。
小規模組織の特性
従業員数50人未満の組織では、コミュニケーションの密度が高く、身体を使った業務に対してしっかりとした自覚があります。例えば、「私の職場の作業環境は十分である」といった設問に対する良好な結果がありました。
しかし、課題も多く見られます。「キャリアを形成するための教育」や「職場の一体感」、「安定した報酬」に関しては、他の規模の組織に比べて低い評価となりました。特に、「意欲を引き出す教育に関する満足度」では、12.7ポイントもの差が見られたことから、教育制度の見直しが急務とされます。
働き方の柔軟性とコミュニケーション
小規模組織は、従業員の距離が近いため、労働環境の改善が進めやすい一方で、コミュニケーション不足が生む不満が顕在化しているとの指摘があります。日常的に情報を共有し、発信することで、職場の一体感は変化し得るものです。ストレスチェックを契機として、組織文化の見直しを行うチャンスと捉え、積極的に取り組む姿勢が求められています。
2028年の義務化を見据えて
ストレスチェックの義務化が進む2028年に向け、小規模組織は今から整備を始める必要があります。ドクタートラストでは、ストレスチェック50という小規模組織向けのサービスを展開しており、導入を推奨しています。チームとしての結束を高める施策を早急に取り入れ、職場の一体感を育てていくことが重要です。
まとめ
ストレスチェックの結果をもとに、小規模組織の強みと弱みに着目した今回の研究。受検率が高いことはポジティブな要素ですが、高ストレス者率や職場の一体感不足の解消が、今後の課題として浮き彫りになりました。企業の成長には、従業員一人ひとりの健康が不可欠です。教育や報酬の充実を図り、健全な労働環境を確保するために、早めの対応が求められています。