新たな水素吸蔵合金タンクの開発がもたらす都市部での水素利用革新

環境に優しい未来を見据えて

水素は、CO2を排出しないクリーンなエネルギーとして注目を浴びています。私たちの日常生活において、環境負荷の少ないエネルギーシステムを求める声が高まる中、さまざまな技術が開発されてきました。その中でも、水素は再生可能エネルギーとの相性が良く、持続可能なエネルギーシステム構築において重要な役割を果たすと期待されています。しかし、水素の効率的な製造と貯蔵、さらにはコスト削減といった課題が残されています。

高性能・低コストの水素タンク

国立研究開発法人産業技術総合研究所（産総研）と清水建設の共同研究により、高性能で低コストな水素吸蔵合金タンクが開発されました。これは都市部における水素の大量導入を可能にするものとして注目されています。

水素吸蔵の仕組み

水素吸蔵合金タンクは、特殊な合金粒の中に水素を貯蔵し、その作りには熱交換器や水素導入機構が組み込まれています。従来の技術では、小さな孔から水素を導入することが一般的でしたが、今回の研究では表面から水素を効率的に導入するための水素拡散板が用いられました。

この新たな設計は、都市部での水素吸蔵の効率と安全性を高め、急速に水素を充填・放出するための高度な熱管理技術が導入されています。熱媒流路制御によって、汎用の熱交換器を活用しつつ、高速での水素吸蔵を実現したのです。これにより、タンク製造にかかるコストも大幅に削減されました。

技術背景と社会的意義

水素吸蔵合金タンクへの技術革新は、エネルギー分野における新たな可能性を秘めています。特に、都市部に設置する際には、環境負荷の低減につながるだけではなく、経済的な観点からも大変意義深い成果です。今回の研究成果は、2025年に国際学術誌「International Journal of Hydrogen Energy」にも発表される予定です。