新たなバイオ模倣非接触汗センサーの開発
近年、健康管理やスポーツ科学において、汗の成分をリアルタイムで測定する技術が注目されています。特に、脱水や熱中症を未然に防ぐための早期予測は、医療現場やアスリートにとって重要な課題です。そんな中、早稲田大学の研究グループが、バラの花びらにインスパイアされた非接触型の汗センサーを開発しました。これにより、従来の発汗センサーの課題を克服する新たな道が開かれています。
開発の背景と目的
身体活動中、自発的な汗は体温調整や酸素供給に大きな役割を果たしています。しかし、その反面、電解質バランスの乱れが脱水や疲労を引き起こすリスクがあります。これまでの汗センサーは皮膚と直接接触する必要があり、慎重に選ばれた粘着剤による設置が必須でした。そのため、長時間の装着時には皮膚炎の危険が伴い、測定精度にも影響を及ぼしていました。
研究グループは、バラの花びらの特性に着目しました。この花びらは水分を適度に保持しながら余分な水をはじく特性を持ち、これを模倣した新しいセンサーの開発へとつながります。さらに、12%の面積拡大によって、イオン感度も向上しました。
バイオ模倣非接触汗センサーの特長
新開発のセンサーには、いくつかのメリットがあります。まず、2 mmの距離からでも有能な測定が行える点です。これにより、装着時の快適さが向上し、皮膚刺激のリスクが大幅に低減されます。特に、外部からの影響を受けやすい汗のデータを、安定した状態で簡単に取得可能にしています。
また、研究によりこのセンサーが最大で3倍の水分保持力を持ち、約2倍の自己洗浄機能を実現していることも確認されました。汗が付着しても、一定の運動を行った際に自己洗浄が行われ、清潔さを保つことができます。これらの特性は医療からスポーツ、さらには外骨格を用いたヒューマンマシンインタフェースにおける応用可能性を大きく広げています。
実証実験と今後の展望
実際に、このセンサーを使用した実証実験が行われ、運動中においても安定した測定が行えることが証明されました。この研究は、2025年8月に発行される「Cyborg and Bionic Systems」でも紹介される予定です。
今後の展望として、AI技術を駆使した脱水予測アルゴリズムの開発も視野に入れています。特に高齢者や皮膚疾患のある患者向けに、長期利用ができる利用シーンを考えているとのことです。さらに、義手や外骨格にこのセンサー技術を組み込み、より安全で快適なヒューマンマシンインタフェースを確立することを目指しています。
まとめ
バイオ模倣非接触汗センサーの登場は、これからの健康管理やスポーツ科学に革命をもたらす可能性を秘めています。自然界のデザインを参考にした新技術が、私たちの生活をより良くするための道筋を示しています。今後の動向に注目が集まります。