新型コロナウイルス感染後のME/CFS研究
岡山大学の大学院医歯薬学総合研究科に所属する森田悟大学院生と、大塚文男教授を中心とした研究グループは、新型コロナウイルス感染症後に見られる筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)に関する新たな知見を発表しました。この研究では、岡山大学病院のコロナ後遺症外来で診察を受けた患者のデータを基に、感染時期によるME/CFSの臨床的特徴を分析しました。
研究の背景
新型コロナウイルスの感染後には、さまざまな後遺症が報告されています。その中でも、ME/CFSは特に日常生活に大きな影響を与える可能性のある疾患です。従来の研究により、ME/CFSは重度な疲労感や筋肉の痛みが持続する病気であり、原因は未だ解明されていないことが知られています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がこれにどのように影響を及ぼすかは、今後の感染症管理において重要な課題とされています。
研究の成果
研究によれば、オミクロン株の流行時期に感染した患者におけるME/CFSへの移行頻度は3.3%と比較的低い結果が見られました。しかしながら、逆にこの時期に感染した患者の81.3%が「ブレインフォグ」という症状を経験しており、集中力や記憶力の低下が見られることが分かりました。このことは、コロナ後遺症の症状の多様性を示しています。
主要な要因
研究者たちは、ME/CFSへの移行しやすい要因として、感染時の症状の重さや生活習慣(喫煙・飲酒)、ワクチン未接種状態が関与していることも示唆しました。これにより、今後の新型コロナウイルス対策や健康管理において、これらの要因に注意を払い、医療提供を最適化することが求められます。
患者へのアドバイス
コロナウイルス感染後の症状に悩む方々は、多様な症状が出ることを理解し、必要に応じて専門医に相談することが重要です。特に倦怠感、集中力の低下、記憶力の障害に苦しむ患者は、早期に適切な相談や治療を受けることで、症状の改善につながる可能性があります。
研究の意義
大塚教授は、研究がME/CFSに対する理解を深め、後遺症の症状を緩和する治療法の開発に寄与することを期待しています。また、「コロナ・アフターケア外来」では、患者一人ひとりの状態に合わせた診療が行われており、森田大学院生は今後もさらなる研究を通じて、病に苦しむ患者の支援を続ける意義を強調しています。
この研究結果は、2024年12月9日発行の国際学術雑誌「PLOS ONE」に掲載される予定であり、新型コロナウイルスの疫学や医学の分野での重要な一歩として注目されています。新型コロナウイルス感染症の影響を受けた方々への理解と支援が、今後ますます求められることが確実です。
引き続き、患者やその家族への情報提供が不可欠となります。