NICTが切り開く量子通信の新たな地平
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が、画期的な研究成果を上げました。これまで世界で誰も成し得なかった、単一光子間の和周波発生を利用した量子もつれ交換が実証されたのです。この技術は、量子通信プロトコルの一環であり、光子を用いて情報のやり取りを行う上で大変重要です。
1. 量子通信の基礎
量子通信では、2つの量子ビット間でゲート操作を行うことが基本技術の一つとされています。これまでの研究では、二光子干渉を利用した方法が主流でしたが、この手法には幾つかの課題がありました。特に、量子もつれ光子対の存在を測定する過程で忠実度が低下してしまうという問題がありました。
2. 単一光子間の和周波発生
NICTの研究チームは、従来の問題を解決するため、新たに提案された単一光子間の和周波発生という手法を採用しました。この方法では、和周波光子を測定することにより、光子対の忠実度を保ちながら量子もつれ交換を行うことが可能となります。これは、次世代量子鍵配送やループホールのないベル不等式の検証に向けて、非常に大きな可能性を秘めています。
3. NICTの最新技術
今回の成果は、NICTが持ついくつかの革新的な技術の統合によって実現されました。具体的には、高速量子もつれ光源や低ノイズ超伝導単一光子検出器、さらに高効率な非線形光学結晶が組み合わされています。これにより、非常に高いS/N比で和周波光子の信号を観測することができ、信号の強度を大幅に改善しました。
4. 実験結果から見えてきた未来
実際の実験では、NICTのチームは和周波光子を高S/N比で成功裏に検出し、量子もつれの存在を確認しました。この成功によって、今後の光量子計算回路のさらなる小型化・高効率化や、量子鍵配送の長距離通信が期待されます。新たな技術の進展により、量子情報処理は今後大きな進化を遂げることでしょう。
5. 今後の展望
NICTは、この技術を更に発展させ、より高度な量子情報プロトコルへの応用を目指しています。研究者たちは、さらなるS/N比の改善を目指し、非線形光学効果を強化していく計画です。この研究は、これからの情報通信技術において重要な足がかりとなるでしょう。
結論
NICTの画期的な成果は、量子通信の未来にとって非常に大きな一歩です。この成果は、2025年10月7日(火)に英国の科学雑誌「Nature Communications」に掲載され、多くの人々から注目を集めることでしょう。今後の研究がどのように進展していくのか、目が離せません。