AIサービスと消費者の関係:信頼と不安の狭間
2025年11月27日、NEC(日本電気株式会社)は「AI時代に変化する消費者意識調査」に関する結果を発表しました。この調査は、SNS、買い物、予約、支払い系のサービスを利用する15歳から74歳の1597人を対象に行われ、AIサービスの利用状況や消費者の意識に関する重要な洞察を提供しています。
調査の概要
NECが実施したこの調査は、AIの利便性とそれに伴う不安を明らかにすることを目的としています。調査の結果、75%の消費者がAIによるパーソナライズ提案を体験しており、そのうち55%は高頻度で利用していることが分かりました。しかし、約66%は「便利だが不安」を感じており、その裏には不誠実な体験が広がっていることが浮かび上がりました。
不誠実な体験の実態
調査によれば、82%の消費者が何らかの形で不信感を抱いた経験があると答えています。特にその要因としては、透明性の欠如やUX/UIによる誤解を招く設計が挙げられます。これらは「ワナのような設計」とも表現され、消費者が利用する際に感じる見えない不安を増幅させる要因となっています。
具体的には、操作ミスを誘発するようなユーザーインターフェースが多く、意図しない課金が発生するリスクや情報の扱いに対する不明瞭さが、消費者に強い不安を与えています。このような不誠実な体験は、顧客の「心」を離れさせ、「行動」に影響を与え、最終的には悪い評判が広まるプロセス—いわゆる「消費者離反プロセス」を引き起こします。
覚醒した顧客と倫理の重要性
現在のデジタル環境では、消費者は企業の活動をより鋭く観察し、倫理的な姿勢を評価する「覚醒した顧客」となっています。これらの消費者は、ブランドの品質以上に企業の倫理や姿勢を重視し、その評価によって製品選びやサービス利用を決めるようになっています。この新しい消費者層は、自らの経験をSNSなどで発信し、企業の透明性に対する要求を高めています。
調査によると、「デジタルエシックス(倫理)」の重要性について90%が共感しつつも、その認知率は1%未満という結果が出ています。このギャップは、企業が倫理を考慮した取り組みを強化することで、競争優位を確立できるチャンスとも言えます。
信頼を築くために
企業は、今後デジタルエシックスに基づいた行動を通じて、消費者との信頼関係を築く必要があります。「守りの倫理」と「攻めの倫理」を両立させることが、企業の成長を促進し、顧客ロイヤリティを形成するカギとなるでしょう。消費者が求める透明性、法令遵守、個人情報の取り扱いに関する誠実な説明が不可欠です。
結論
NECの調査結果は、AIサービスの利便性の影に潜む不安やリスクを明らかにしています。企業は、ただ便利なサービスを提供するだけでなく、顧客の信頼を得るための透明性や倫理的な行動が求められる時代へと突入しています。それによって、顧客との持続的な関係構築が可能になるでしょう。今後は、デジタルエシックスが企業の成長を支える柱となることが期待されます。