宮本亞門が先導する「ひきこもりVOICE STATION全国キャラバン」
8月23日、横浜のみなとみらいにあるビジョンセンターで、演出家の宮本亞門さんがファシリテーターを務める「ひきこもりVOICE STATION全国キャラバン」が始まりました。このイベントは、ひきこもりに対する理解を広げることを目的とし、パルシステム連合会の「ひきこもり広報事業」の一環として実施されています。
参加者は、会場に集まった243人とオンライン参加者を合わせ、様々なひきこもり経験者が集まり、対話を通じてそれぞれの思いや感情を分かち合いました。
人生ドラマグラフとは?
この全国キャラバンの特徴的なプログラムに、「人生ドラマグラフワークショップ」があります。これは、ひきこもりを経験した当事者やその家族が、自身の過去や感情の起伏を折れ線グラフの形で表現するもので、参加者は自身の思いを言葉として外に出す過程を経験します。宮本さんの自身の過去のグラフを紹介しつつ、他の参加者8人の人生ドラマについても語り合いました。
開催地の横浜で、宮本さんは自らの経験と作品づくりへの思いを述べました。彼は、幼少期から芸能やアートに触れて育ち、その中で周囲の期待に応えようとした結果、孤立感を味わうこととなります。高校入学後にひきこもりになるまでの心の流れは、多くの参加者に共鳴するものだったと言います。
グラフによる朗読劇の展開
参加者たちは、人生ドラマグラフを基に、自身の過去を演じる朗読劇を披露しました。自身の感情を他者の言葉として表現することで、過去の出来事を再認識する体験が広がり、参加者からは「当時の気持ちを呼び起こされた」という声が上がりました。
宮本さんは「誰もが異なる物語を持っていて、他者の経験を通じて自分を見つめ直す機会となる」とワークショップの意義を力説しました。こうした活動が、ひきこもりに対する理解を深める手助けになると期待されています。
パネルトークで語られた支援の新たな形
イベントでは、高校卒業後に25年間ひきこもった経験を持つ当事者や、家族の支援者によるパネルディスカッションも行われました。ここでは、「自律」と「自立」というテーマで、過去の支援方法についての議論が進められました。ひきこもり支援の目指すゴールが、経済的自立から自分自身の価値を見出すことへシフトしているという背景が語られました。
当事者たちの実体験をもとに、自己肯定感の向上や地域社会への参加の大切さが強調され、参加者全員が未来への希望を持てるようなメッセージが共有されました。
これからの活動への期待
「ひきこもりVOICE STATION全国キャラバン」は、9月から11月にかけて神奈川、高知、秋田、新潟、奈良、大分の6ヶ所で開催されます。各地の特性を活かしたプログラムを通じて、多くの人にひきこもりについて理解を広めていく取り組みが期待されています。
パルシステム連合会は、このキャラバンを通じて「ひきこもり」への偏見をなくし、誰もが生きやすい社会を構築することを目指しています。また、様々なコミュニティと連携し、共にサポートを必要とする仲間を増やしていく活動も続けていくとのことです。
今後の活動にも注目が集まります。