捕食者に伴う進化の不思議! 5世代で長くなる死んだふり行動の実験研究
岡山大学の研究チームが新たに発見した興味深い事実は、捕食者と共に生活することによって、餌となる昆虫の行動が進化する可能性があるということです。研究対象に選ばれたのは貯穀害虫のコクヌストモドキ。この甲虫は、特定の捕食者であるコメグラサシガメと同居させることで、驚くべき進化を見せました。
研究の背景と目的
「死んだふり」とは、外的刺激に対処する生物の自衛行動の一つ。さまざまな動物がこの行動を取ることが知られていますが、実際に野生環境でこの行動が進化するのか、という問いには明確な答えがなされていませんでした。そこで、岡山大学の宮竹貴久教授は、学生たちと共にこの問題に取り組むことを決意しました。
実験の概要
今回の実験では、コクヌストモドキを捕食者であるコメグラサシガメと共に飼育する環境と、そうでない環境を設け、5世代にわたって観察を行いました。その結果、捕食者と同居したコクヌストモドキは、同居していないものに比べて死んだふりの持続時間が3倍以上長くなるという結果が得られました。これは非常に大胆な進化の証といえるでしょう。
進化のメカニズム
研究チームは以前のフィールドワークからも、捕食者と同居する集団においては死んだふりの持続時間が長いことを確認していました。実験を通じて、進化のメカニズムをさらに深く理解する手がかりを得ることができたのです。経験値の蓄積が、死んだふりの持続時間を向上させる要因となるのかもしれません。特に、捕食者の存在がどのように彼らの行動に影響を与えているのかを考察することが、この研究における重要なポイントです。
研究の意義と今後の展望
本研究は、東京大学の松村健太郎助教や岡山大学農学部の卒業生たちと協力して行われ、その結果は国際的な学術誌に掲載されるに至りました。宮竹教授は、昆虫の行動が進化する過程を明らかにできたことが、自身にとっての意義深い成果であると述べています。
結論
最終的に、この研究は死んだふり行動が進化するという未解明の問いに対する答えを見出すための第一歩となりました。この実証実験によって、捕食者の存在がどのように生物の行動に影響を与えるのかを知る手掛かりを得ることができました。今後の研究が、さらなる進化のプロセスや生態系における捕食者と被食者の関係を解明する上で重要な役割を担うことを期待しています。
この研究は、今後の昆虫研究における新たな視点を提供し、我々が昆虫の生態を理解する手助けとなることでしょう。興味深い進化の旅はまだ始まったばかりです。