建設現場の事故防止に向けたウェアラブルセンサの活用を探る

建設現場の事故防止に向けたウェアラブルセンサの活用

建設業は、様々な安全対策が講じられているにもかかわらず、依然として労働災害が発生しやすい業種です。その中でも墜落や転倒による事故は特に多く、一刻も早い対策が求められています。そんな中、法政大学の今井龍一教授が率いる研究チームが発表した論文が注目を集めています。この研究は、ウェアラブルセンサの活用を通じて、建設現場での事故リスクを低減する方法を提案しています。

研究の背景と目的

建設業の労働災害件数は年々減少していますが、死亡者数は依然として全産業の中で最も多い現状です。主な原因としては、墜落や転落、転倒が挙げられます。そこで研究チームは、こうした事故の前兆となる「ヒヤリハット」と呼ばれる動作（つまずきや滑り）を検出し、さらに作業員の身体的疲労を推定することで、事故防止に寄与できるのではないかと考えました。

ウェアラブルセンサの選定と実験方法

研究では、20代男子学生8名を被験者に設定し、3種類のウェアラブルセンサを使用。具体的には、スポーツセンシングデバイス「xG-1」、バイタル計測が可能な「Apple Watch Ultra」、および「iPhone 12 Pro」が用いられました。この研究により、ヒヤリハット動作の検出と疲労度の可視化が可能であることを確認しました。

ヒヤリハット動作の検出精度

実験の結果、「iPhone 12 Pro」で取得されたデータに対して機械学習モデルの一つであるCNN（畳み込みニューラルネットワーク）を適用すると、非常に高い精度でヒヤリハット動作を検出できることが分かりました。これは、事故の予防に向けた新たな手段となる可能性を秘めています。

疲労度の可視化

また、運動時の動作データを高精度で取得が可能な「xG-1」を用いることで、作業員の疲労度の可視化においても有効性が示されました。疲労が蓄積することで事故のリスクが高まるため、このデータをもとに作業管理が行われれば、より安全な作業環境が実現できるかもしれません。

今後の展望

研究チームは、今後実際の建設現場におけるデータ収集を行い、さらにヒヤリハット動作の検出や疲労度推定の実用性を検証していく予定です。これにより、建設業界の安全性向上に貢献することが期待されています。

このように、法政大学の今井教授らによる研究は、未来の建設現場における安全性を高めるための重要なステップとなるでしょう。ウェアラブルセンサ技術の進化が、事故の発生を未然に防ぐ日もそう遠くないかもしれません。