西之島の植物研究
2025-07-29 14:23:43

西之島の植物の起源に迫る研究が新たな知見を提供

西之島の植物の起源に迫る新たな研究



最近の研究で、東京都立大学の髙山教授と京都大学の中野准教授を中心とするチームが、西之島にかつて存在したスベリヒユ(Portulaca oleracea)の遺伝的特徴を解析し、その起源を解明しました。西之島は、小笠原諸島・父島から約130km離れた孤立した海洋島で、2013年以降の火山活動により植生が完全に消失しています。研究チームは、西之島のスベリヒユが他の島々からどのように移り住んだのかを分子遺伝学的手法で探りました。

研究の背景と重要性


西之島は火山活動によって、孤立した環境での生態系の形成過程を観察するための貴重なフィールドとなっています。他の陸地がほとんどない厳しい環境で、植物の定着から群落形成に至るまでの過程を理解できるため、自然の実験場としての価値が高いのです。2019年に採集されたスベリヒユの標本が重要な手がかりとなりました。

スベリヒユの遺伝的特徴


研究では、計51集団254個体を対象に葉緑体ゲノムの塩基配列と核ゲノム全体の一塩基多型解析が行われました。その結果、西之島のスベリヒユは父島の個体群と最も遺伝的に近く、独自の遺伝的組成を持つことが判明しました。このことは、ごく少数の種子による定着や、火山活動や自然災害によって起こる遺伝的浮動の影響を受けていた可能性を示唆しています。

特に興味深いのは、スベリヒユが父島と同じ系統に属しつつも、独自の遺伝的特徴を持つことが明らかになった点です。この研究結果は、創始者効果や遺伝的浮動が、植物の初期定着過程における遺伝的多様性をどのように形成するかを理解するための新たな手がかりを提供します。

研究の意義と期待される波及効果


この研究は、西之島のような環境における植物群落の成立過程を明らかにした初めての試みであり、特に火山活動によって植生が消失した後の再定着過程に対する理解を深めることにもつながります。将来的には、こうした情報が新たな植生回復計画や生態系管理の基礎資料となることが期待されています。

結論


西之島にはかつて生育していた植物の遺伝的属性を解析したこの研究は、海洋島における初期生態系の形成に関する新たな洞察を提供するものであり、多様な生態系を再構築するための鍵となる知見を得られたと言えるでしょう。今後、このような研究が進むことで、絶滅した植物群の復活や保全に向けた道が拓けることを期待したいものです。

研究の詳細情報


本研究は、植物系統と進化に関する専門誌「Plant Systematics and Evolution」に2025年に掲載予定です(DOI:10.1007/s00606-025-01957-y)。


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