河川ごみモニタリングシステム「PRIMOS」
八千代エンジニヤリング株式会社と愛媛大学が共同開発した新しい川ごみモニタリングシステム「PRIMOS」が2025年4月から提供開始されます。このシステムは、河川表面に存在するプラスチックごみの量を把握できるだけでなく、AIを活用してその種類を自動的に検出・分類することが可能になっています。昨今の環境問題の中でも特に深刻なプラスチックごみの流出問題に対し、科学的なアプローチで解決を目指します。
開発背景
世界中でプラスチックごみの河川経由による海洋流出は大きな問題となっています。八千代エンジニヤリングは、2021年に開発した「RIAD」というソフトウェアを通じて河川のごみ量をモニタリングするサービスを提供してきました。しかし、「RIAD」はごみの種類を特定することができず、さらに伝統的な調査方法には手間や費用、観察者の能力に依存するという課題がありました。
「PRIMOS」の開発は、これらの課題を克服することを目的としています。愛媛大学との共同研究により、画像解析AI技術を活用したこの新しいシステムが誕生しました。これにより、高精度かつ客観的に川ごみのモニタリングが可能になります。
PRIMOSの特徴
「PRIMOS」の最大の特徴は、AIによる自動分類機能です。河川を撮影した動画からごみを自動で検出・分類するこの技術は、浮遊するプラスチックごみ、つまりペットボトルやプラスチック袋などを高精度で識別します。また、水位の変動にも対応できるため、洪水時でも安定した性能を維持します。
実証試験では、特に飲料ボトルや食品容器、ショッピングバッグなどの使い捨てプラスチックの検出において、高い精度を示しました。これにより、環境保全につながる重要なデータの収集が可能になります。
システム概要
「PRIMOS」はWEBサービスの形で提供されます。ユーザーは対象の河川の動画を撮影し、システムへアップロードするだけで、自動的にごみの量を計算できるのです。これにより特定の河川におけるごみの輸送量変化を把握することが可能になります。あらゆる企業や団体が活用できるシステムに仕上がっており、建設コンサルタントや環境調査機関、学術機関などがその対象となります。
従来システムとの違い
これまでの「RIAD」では、浮遊するごみの量を色差で判別していましたが、種類の特定まではできませんでした。新たに開発された「PRIMOS」では、YOLOv8インスタンスセグメンテーションモデルという画像解析技術を使用。これにより、出水時の水位上昇などの厳しい条件下でもプラスチックごみを安定的に識別できます。
環境への貢献
「PRIMOS」は持続可能な開発目標(SDGs)にも寄与します。例えば、目標6「安全な水とトイレを世界中に」や目標11「住み続けられるまちづくりを」など、河川環境のモニタリングを推進し、持続可能な水管理や都市環境の保全に貢献します。また、目標14の「海の豊かさを守ろう」についても、河川からのプラスチック流出実態を解明することがこのシステムの重要な課題です。
八千代エンジニヤリングと愛媛大学は、社会実装を通じて川ごみ流出の実態解明に貢献し、海洋プラスチックごみ問題の根本的な解決を目指します。
お問い合わせ先
- - 八千代エンジニヤリング株式会社 川ごみモニタリングシステム開発係 Email: yec-river-monitoring@yachiyo-eng.co.jp
- - 愛媛大学大学院理工学研究科 環境建設工学講座 片岡智哉 Email: kataoka.tomoya.ab@ehime-u.ac.jp
- - 愛媛大学総務部広報課 Email: koho@stu.ehime-u.ac.jp