麻布大学とカーブジェンが進める牛乳房炎のAI同定システム
神奈川県相模原市に位置する麻布大学獣医学部と、東京都渋谷区のカーブジェン株式会社は、酪農業界の大きな課題である牛乳房炎の診断を支援する新たなAIシステムを共同開発することになりました。このプロジェクトは、公益財団法人全国競馬・畜産振興会からの助成を受け、2026年度から2028年度までの3年間にわたって展開されます。プロジェクトの責任者は、麻布大学の河合一洋教授が務め、牛乳房炎の原因菌を特定するためのAI技術を実用化していきます。
牛乳房炎とその影響
牛乳房炎は乳牛にとって非常に深刻な疾病であり、酪農経営において大きな損失をもたらします。この病気の治療には多くの抗菌薬が使われますが、抗菌薬の適正使用が進まないと、薬剤耐性(AMR)の課題が深刻化する恐れがあります。このため、適切な原因菌の同定や薬剤感受性検査が不可欠です。
AIシステムの開発背景
これまで、臨床現場では目視による原因菌の同定が行われてきました。しかし、この方法では高い専門知識と熟練が求められ、時間もかかるために、全国の獣医師がこの技術を利用することが難しいという現実があります。麻布大学は長年の研究を基に、この課題を解決するためにAIの力を利用し、誰でも簡単に原因菌の同定が可能となるシステムの実現を目指しています。
具体的な取り組み内容
このAIシステムでは、牛の乳房の培地上に形成されたコロニーの写真をスマートフォンで撮影し、その画像データをカーブジェンのライフサイエンスAIプラットフォーム「CarbConnect®」に送信します。AIがこのデータを解析し、菌種を推定する支援を行う仕組みです。麻布大学とカーブジェンは、各自の専門知識を活かし、このシステムの開発を進めています。
麻布大学の役割
1. 乳房炎原因菌株および培地コロニー画像の収集と撮影
2. 臨床獣医師による同定実装試験と評価
3. 研修会の開催や成果の公表
カーブジェンの役割
1. AI同定モデルの開発とデータ解析基盤の提供
2. 撮影条件の標準化設計
3. 学習データの整備
プロジェクトの社会的意義
本プロジェクトは、牛乳房炎の診断精度を向上させるだけでなく、抗菌薬の使用における慎重さを促進し、ひいてはAMRに対する重要な対策となることが期待されています。正確な診断が実現されることで、酪農業界全体の基盤が安定し、経済的なメリットももたらされるでしょう。
未来への展望
両者は、このシステムを通じて獣医師だけでなく、動物看護師や検査技師など、広範な職種の人々が利用できるツールに発展させる計画です。また、全国の診療所や民間ラボ向けに、強固な検査体制を構築しながら持続可能な酪農を進めることにも注力していきます。カーブジェンは、微生物と感染症の専門的な技術を基に、医療やヘルスケア領域でのDXやAIソリューションの提供をさらに拡充していく方針です。
まとめ
麻布大学とカーブジェンの協力によって生まれるこのAI診断システムは、牛乳房炎の適切な診断と治療の確立に向けた重要な一歩です。彼らは共に、より良い酪農環境を提供し、持続的な発展に繋がる新しい道を切り開くことでしょう。