システム開発における新たな評価基準「引き算の提案力」とは

システム開発における重要な評価基準

近年、システム開発においてますます多くの企業が「引き算の提案力」を重要視するようになっています。この概念は、必要な機能を見極め、無駄な要件を削減することに重点を置くものです。エンジニアフォースが行った実態調査によれば、500名以上の従業員を持つ企業の意志決定者111名を対象とした結果が明らかになりました。ここでは、調査結果をもとにシステム開発プロジェクトのコンペで何が重視されているのか、そして「引き算の提案力」がなぜ重要なのかを探ります。

コンペで重視される要素

調査結果によると、システム開発プロジェクトのコンペで最も重視されている要素は、「技術力と開発実績」が69.4%、次いで「UI/UXデザインの質とユーザー視点」が60.4%という結果でした。このように、高い技術力はもちろん、ユーザーにとって使いやすく魅力的なデザインも重要視されています。

さらに、95.5%の回答者が「UI/UXデザインと技術の両立」を選定基準として重要視しており、これはユーザー体験が企業の成功に直結するからです。また、社内外のステークホルダーの理解を得やすくなることも、両立の重要なポイントです。

機能削減や要件見直しの提案

驚くべきことに、9割以上の参加者がベンダーから「機能削減」や「要件見直し」の提案を受けた経験があると答えています。その内の87.3%がこれらの提案を高く評価していることから、ただの機能追加ではなく、本質的な価値を提供することが求められていることが分かります。

機能追加に偏ることなく、むしろ必要な要素を見極めることで真に価値あるソリューションを提供するスタンスが、クライアントにとって高く評価される時代が来ているのです。

開発ベンダーへの期待

理想的なシステム開発ベンダーに求められる要素として、「本当に必要な機能を見極めて提案してくれること」、また「デザインと技術を高いレベルで両立させること」が同率で51.4%を占めています。つまり、技術的な理解を深めつつ、ユーザー視点を忘れない姿勢が強く求められています。

また、システム開発による不満の第1位には「ユーザー視点が欠如していること」が挙げられており、技術的な説明が難解であることも課題とされています。要するに、技術力だけでなく、ユーザーによりそった提案やコミュニケーション能力が求められる時代に突入しているのです。

懸念と新たな方向性

この調査から、高い技術力とデザインの質を両立させるベンダーが与えられた選択肢として、企業間での競争が一層激化することが伺えます。企業は、その壁打ちや相談の場として、より多くの外部ベンダーとのコミュニケーションを必要としていることが分かります。これは、要件定義や技術選定のサポートを行うため、ビジネスの成功に寄与する重要な要素です。

以上の結果より、システム開発のベンダー選定基準は今後「引き算の提案力」を基準として、従来の技術力のみに依存せず、ユーザー体験に基づいた実績が重視されると考えられます。このような新たな傾向は、DX推進が進む中で、企業が求める真のパートナーシップのあり方を示唆しています。

おわりに

情報技術は進化し続けていますが、単に最新技術を取り入れるだけでなく、クライアントのニーズにあった本質的な提案や、必要な機能を見極める能力が今後ますます重要になるでしょう。企業が目指すべきは、技術とデザインの両立、それを実現するべンダーとの信頼関係の構築です。そうした新しい時代の中で、引き算の提案力が今後もますます重要な役割を果たすことが期待されます。