研修が機能しない理由と知識の誤配置
近年、多くの企業が研修や学習機会を増やしているにもかかわらず、現場では依然として「知っているのにできない」という状態が続いています。これには個人の能力や意欲の問題ではなく、知識の性質とその仕事上の扱い方がついてこれていないという根本的な原因があると、リクエスト株式会社が運営する人的資本開発プランニングセンターの新レポートが指摘しています。
知識の2種類の分類
本レポートでは、知識は経験を必要としないものと経験を必要とするものの2つに分類されます。
- - 経験を必要としない知識は、手順や基準が事前に定義されており、それに従うことで仕事が成立します。たとえば、業務マニュアルや標準操作手順がこれにあたります。
- - 経験を必要とする知識は、判断の違いが結果に影響を与え、その結果を踏まえて基準を更新することで初めて成立します。これには、営業活動やプロジェクト管理など、複雑な判断が関わる業務が該当します。
この2つの知識を混同すると、判断を伴う仕事が「手順でできるもの」として扱われてしまい、効果的な学びが実現できなくなります。
研修や書籍の逆効果
研修や書籍が経験を必要とする知識を「分かりやすく」翻訳することが、逆効果を生むことも問題とされています。具体的には、次のような現象が見受けられます。
1. フレームワークが「正解」として固定化される。
2. ケーススタディが「模範回答」とされる。
3. 原則が「守るルール」として扱われる。
これによって、理解は深まるものの、実際の判断力や行動変容にはつながらない場合が多くあります。これがどのようにして起こるのか、その因果関係を、レポートは工程別・役割別に整理しています。
解決策は学習追加ではなく仕事の再設計
レポートでは、解決策を「学習の追加」ではなく「仕事の再設計」としています。具体的な対策としては、以下のようなポイントが示されています。
- - 判断点と担い手の明示化:誰がどのポイントで判断を下すのかを明確にすることが重要です。
- - 判断理由や結果を成果物として残す:判断した根拠や結果を記録に残すことで、次の行動に活かされます。
- - 成果の評価基準の見直し:成果を「完了」とするのではなく、「基準の更新」に基づいて評価することが求められます。
このように、教育施策に依存せず、仕事設計の見直しを行うことで、労働環境が改善される可能性が高まります。
人的資本経営の根本課題
本レポートでは、なぜ人的資本投資が成果につながらないのか、という問いに対しても、知識の性質と仕事設計の観点から整理されています。具体的に問い直すべきポイントは「何を学ぶか」ではなく、「どの仕事に判断を戻すか」であり、これが今後の企業経営には不可欠な視点です。
結論
リクエスト株式会社が発行したこのレポートは、企業が抱える研修や人的資本開発における根本的な課題についての洞察を提供しています。組織の育成において、どのように知識と経験を活用すべきか、企業や組織の経営者にはぜひ一度目を通していただきたい内容となっています。レポートの詳細は、公式ウェブサイトにてダウンロード可能です。