岡山大学が牽引する新たな医療革新
国立大学法人岡山大学が、次世代型の高精細PET診断薬を開発し、加えて画期的な臨床研究を進めていることが発表されました。この研究により、パーキンソン病や心不全、さらにはがんの悪性度を早期に診断する技術が期待されています。具体的には、心筋や腎臓の微細な病変を高精細に可視化する放射性診断薬が実用化に向けて動き始めました。
研究の背景
本研究は、岡山大学の学術研究院医歯薬学域(医)の能勢直子助教と樋口隆弘教授が中心となり、ドイツ・ヴュルツブルク大学との国際共同研究によって進められています。今回開発された新しいPET診断薬は、日本において初めて臨床研究が開始され、その後ドイツでも臨床応用が進む見込みです。
薬剤の特性と効果
特に注目すべきは、心筋・腎臓の微細病変とがんの悪性度に関わる分子変化を高精細に捉えることができる放射性診断薬「F-18標識化合物[18F]DR29」です。この診断薬は安全性と有効性が確認されており、今後の医療現場での活用が期待されています。これにより、診断と治療を結びつける「セラノスティクス」という新しい医療形態の実現が見込まれています。
セラノスティクスとは?
セラノスティクスは、「治療」と「診断」を融合させ、病態を高精度に診断するだけでなく、その結果を基に最適な治療を行うことを目指す新しい医療のスタイルです。近年、がんや神経疾患など、個別化医療が重要性を増している中で、このアプローチは非常に注目されています。
提供する価値
樋口教授は、「この研究成果は、日本とドイツの強みを活かし、基礎から臨床応用までを一貫して推進できたことに大きな意義があります。特に神経疾患や心不全、がんに関連したこのPET診断薬が、早期診断や治療評価に貢献し、個別化医療を進展させることを期待しています。」とコメントしています。
発表された論文情報
この研究成果は、米国心臓協会(AHA)が発行する医学雑誌『Hypertension』に2025年8月8日に掲載されており、診断と治療の新しい道を切り開く重要な一歩となっています。論文タイトルは「Redefining AT1 receptor PET Imaging: Introducing the Radiotracer
18F]DR29」で、詳細は[こちらから確認できます。
未来への展望
岡山大学は、国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」にも積極的に取り組んでおり、このPET診断薬の開発は地域社会や国際的な研究に貢献することが期待されています。今後も、医療現場や研究開発の最前線で新たな価値を提供し続ける岡山大学に、一層の期待が寄せられています。彼らの技術革新が、より良い未来の医療に繋がることを願っています。