岡山大学が開発した次世代の熱電変換材料
国立大学法人岡山大学の林靖彦教授を中心とした研究チームが、有機高分子系複合熱電変換材料の新しい設計指針を確立しました。この研究は、エチオピア、中国、シンガポールの研究機関とも連携し、2025年9月に英国王立化学会の雑誌「Journal of Materials Chemistry A」に掲載されたものです。
研究の背景
熱電変換材料は、排熱を直接電気に変換することができるため、持続可能なエネルギー技術として注目されています。特に有機高分子系の複合材料は、軽量で柔軟、さらにコスト面での利点を有しています。しかし、これまでの技術では、ゼーベック係数(温度差から生じる電圧)と導電率(電気の流れやすさ)がトレードオフの関係にあり、両者を同時に高めることが課題でした。
新たな設計指針
今回の研究で、異なる材料の接触部分でのエネルギー障壁を調整することで、低エネルギーキャリアを効果的に遮断し、高エネルギーキャリアのみを選択的に透過させることができる「エネルギーフィルタリング効果」を明確に示しました。これにより、150℃以下の未利用排熱を高効率で電力に変換することができ、持続可能な低炭素社会の実現に貢献することが期待されます。
実用化の可能性
この研究成果は、ウェアラブルデバイスやフレキシブルセンサー、自立型電源デバイス、さらには環境からの低温排熱の回収技術への応用が期待されています。これにより、我々の生活により身近な形でエネルギーを活用できる技術が実現するかもしれません。
まとめ
林教授は、「従来の研究では経験的な条件最適化を超えることができず、普遍的な設計原理を確立するには至っていませんでした。この研究は、国際共同研究を通じて、それを体系的に整理したものです」と語っています。これにより、今後のエネルギー変換技術のさらなる発展が期待されます。この研究を通じて、岡山大学は持続可能な未来へ向けた新たな道を切り開いています。
詳細な研究内容については、岡山大学の公式サイトや論文にて確認できます。これからの進展に注目が集まります。